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「中国文明論集」より、陶磁史の視点 第八回

第八回。
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東洋史論:「龍の爪は何本か」より抜粋・雑感。
(※宮崎氏の東洋史・論文「中国文明論集」より。)

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龍はそもそも想像上の動物だから、爪の数などは何本でもかまわない。そう言ってしまえば至極簡単で、それでも通るのである。実際に中国古代の壁画や器物などに現れる龍の爪は、三本だったり四本だったりして別に一定の規則はなかった。ところが中国では宋以後、近世的な天子独裁政治が始まると、だんだん龍の紋様は天子に独占されるようになり、それが龍の形状にも影響を及ぼす様になってきたので、そう簡単にはすまされない、話が大分ややこしくなるのである。

中国では昔から龍は人君の象徴とされた。天子の顔を龍顔といい、天子の車を龍駕といい、天子の着物を袞龍の衣という。(中略)清朝に至って、龍の解釈はいよいよ狭いものになった。龍とは五本爪の龍のことだけで、それ以外は龍の形をしていても龍ではない、それは蠎(ウワバミ)だ、というのである。この解釈に従うと、日本でお寺の天井や、掛物にかかれている龍は、ほとんどすべて四本爪以下のものばかりであるから、龍に似て実は龍ではなく、龍に似た蠎(ウワバミ)だということになる。

(中略)もちろん、爪の数は絵の出来不出来とは全く別物である。大将の肖像がいつも兵卒の肖像よりすぐれているとはいえぬと同様、五本爪にかいたからといって傑作になるとは限らない。(中略)中国の歴史を研究するには、あらゆる方面にこのような下らぬことにも気をくばらなければならない。自然科学の場合のように、単刀直入、まっしぐらに本質的な問題に向かって取り組むというわけにはいかない。いろいろな煩わしい二義的な問題を片付けた後、豊富な常識を身につけてから本当の問題に取りかからねばならない。この手続きを怠ると、つまらない所でボロを出すおそれがある。だから人間も四十歳くらいにならぬと一人前の研究者になれぬなどともいわれる。いやそれどころではない、還暦をすぎた我々でも、時々馬脚を現わして恥じ入る事がよくある。
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五爪龍の話は有名だから御存知の人も多いだろう。陶磁史も歴史家の領分であり、歴史学者の研究によって明らかとなる場合は多い。その研究が信頼されるのは、上記の様な繊細かつ謙虚な姿勢によって導かれているからに他ならない。世は無宗教の中で必然的に合理主義を選択する人が多いのであるが、「直截的な要・不要の判断」というものは、往々にして馬脚を現わすことになる。「茶が旨ければ茶碗なんてどうでもいい」などと言ってしまえば簡単であり、一般人の意見としては別にそれでいいのだが、専門家を自称するならば、これは「低俗なる馬脚」に他ならない。此の手の勘違いというのは専門家全般、例えば「政治家の庶民感覚披露」など、よく覚えがあるだろうか。根幹を説明しないでマスコミは批判するが、一般人の視点と、専門家の視点というものは違って当然なのである。

爪の数は、肩書の様なものであろうか。覚えたての知識として、よく龍の染付を見ると「真っ先に爪の本数を数える人」が居るものだ。しかし当然、五爪などというものは僅少であり、百年来の贋作史と近代転写技術を知っていれば、もう呉須の発色や釉調、形状の端正美などを考察しないことには真贋は当然に下せないもの。目が肥えていれば何でも判断出来る、などというものは直截的な素人観念で、骨董趣味ならよいものの、専門家となれば知識と経験を併せてこその専門家である。

何がプロで、何が素人か。これ1つでも、見分けの知識を勉強したかどうか、というのは大切である。素人的に、「売上の高いものがプロですよ」などというのは「素人判断」としては別に非難されないが、専門家らしき人が、テレビなどで高らかに歌い上げるものではないのである。

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論者:吉村祐

吉村祐


〆真の茶陶を求め、忍びの里にて古伊賀を追う日々。1980年生。
陶工:吉村 祐 (ユウ)
窯場案内:伊賀丸柱から北へ10分、信楽から東へ20分程の山中。

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