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岡倉天心「茶の本」に見る思想1 「はしがき」より

冒頭に岡倉天心の弟君が寄せた文が掲載されている。天心の性情について書かれているので参照しておきたい。

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たやすく郷党に容れられ、広く同胞に理解されるには、兄の性行には狷介味があまりに多かった。画一平板な習俗を懸命に追うてただすら他人の批評に気をかねる常道の人々からは、とかく険峻な隘路を好んでたどるものと危ぶまれ、生まれ持った直情径行の気分はまた少なからず誤解の種をまいてついには有司にさえ疑惧の眼を見はらしめるに至った兄は、いまあらのように天地の広さを思い祖国のために尽くす新しき道に想到したのであった。
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狷介味が強かったとされる人物。序文には手放しの称賛が行われるのが常であるが、冒頭の文として慎重に選択された言葉である事には留意が必要だろう。訳書の出版時は1927年。論壇の盛んな時代背景もあるだろうか。ともかく、「片意地が強くて妥協を許さず、他人と強調せずにこれを遠ざけ、人の云う事を聞き入れない人物。」そういった人物として郷里から見られていた。直情のままに突き進む人物。交遊の深かったフェノロサとも晩年には距離を取っており、とかく孤高であった事を感じさせる。

もちろん。この評価を即ち「正しい」として受け取ることは難しい。数多くの名言が示してきた様に、本物の人物というものは多く誤解され、称えられし正義は少なからず敬遠され、ともすれば孤高に陥る事が多いもの。君子豹変す。大義を為す者は、その孤高と引き換えに偉業を為す側面がある。彼の言葉に意味が無ければこれほどに取り上げられる事は無かっただろう。事実と言葉を天秤に掛け、冷静に言葉を受け取っていきたい。

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外国の文字でつづられてあるというゆえをもって、自国の者がその存在をさえ知らずにいることを遺憾に思って、洋々塾の村岡博氏が、原文の一字一句をもゆるがせにすることなく多大の労苦を物ともせずに、章一章克明に日本語に写して塾の雑誌『亡羊』に、昭和の二年(1927)四月の創刊号から前後十号にわたって掲載し、翻訳者としての最善を尽くし、昨年八月ついに業をおえられたのである。
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本書が訳された経緯。先んじてドイツ語、フランス語に訳されて広く西欧諸国で読まれて後の事で、アメリカで出版されて後、半世紀の時間を経ている。現代の日本にもまた、「異国の評価を以て」という例が少なくは無い。例えば「日本陶磁器の種類豊富で大衆の日常に用いる食器が華麗である事」は過去より驚嘆されてきた文化であるが、こういったものも捨て去られて「白い器」を持て囃す「研究家」なる者が居て、追随する者、また料理研究家が「モダン」な器をデザインしたり、何とも滑稽な事である。その他、茶道や禅というものを高く評価するのも西洋諸国であるし、焼物の種別としても伊賀信楽の素朴なる自然美を高く評価してくれているのも西洋諸国である。和食と呼ばれる料理群に関しても同じこと。日本は茶道や信楽や懐石というようなものを、「古臭い」という建前で以て「触れるも恐ろしきが如く」に扱う癖があると聞き及ぶ。理解してからこれを批判するのではなく、無理解であるにも関わらず「イメージ」で批判するというのは、全く「ブランド信仰」にも見られる日本人の特質である。数千年の古くより「あるべからず」と批判されてきた「軽薄な判断方法」を、未だに我々は未だに有している。

岡倉天心もまた、日本からは「触れるも恐ろしきが如く」に扱われた人物と言えるだろう。その著作を訳した人物もまた、本当の処を知る人物か。

次回以降、本文に入ります。

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論者:吉村祐

吉村祐


〆真の茶陶を求め、忍びの里にて古伊賀を追う日々。1980年生。
陶工:吉村 祐 (ユウ)
窯場案内:伊賀丸柱から北へ10分、信楽から東へ20分程の山中。

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